- 2025.06.11 UP
-
2009年より歩みをともにしてきた「J.S.Foundation ミャンマー子ども医療支援プロジェクト」。
本年も、ジャパンハートより2024年度の活動報告が届きましたので、ここにご紹介させていただきます。ミャンマーでは、軍事クーデターによる政情不安に加え、2024年3月に発生した大地震の影響もあり、非常に厳しい状況が続いています。
このような中でも、未来を担う子どもたちへの支援を絶やさぬよう、2025年度も引き続き、4,295,242円(2025年度分4,000,000円および2024年度の不足分295,242円)を支援させていただきます。また、大地震により甚大な被害を受けたワチェ慈善病院をはじめとする医療施設の修繕・整備につきましても、別途、ジャパンハートと連携しながら、必要な支援を継続してまいります。
どんなに困難な状況にあっても、子どもたちが笑顔を取り戻せる日を信じて。
私たちは、これからも寄り添い、共に歩んでまいります。2024年度 J.S.Foundation ミャンマー子ども医療支援プロジェクトミャンマーの子どもたちへの温かいご支援、どうもありがとうございます。
ミャンマーの国内情勢は引き続き不安定で、国民の生活は徐々に厳しくなっています。
頻発する停電にクーデター前から比べると3-4倍にも上る物価高騰、国内紛争の悪化とそれによる避難民の急増、今なお苦難な状況に立たされ続けています。
それに追い討ちをかけるように、3月28日にはワチェ慈善病院のあるザガイン管区を震源とした大地震にも見舞われました。
これによりワチェ慈善病院の病棟や手術室も被害を受け、現在は1日も早い復旧に向けて修復工事を進めています。そのような状況下ですが温かいご支援によって、2024年度はワチェ慈善病院そして関連病院にて227名の子どもたちに無償で治療を提供するともに、養育施設Dream Trainではそこで生活する118名の子ども(2025年3月末時点)も健康に過ごすことができました。
ご支援に感謝申し上げると共に、その成果を報告させて頂きます。地震によって被害を受けた手術室
再開に向けて修復を終えた手術室
ワチェ慈善病院の周辺にも迫る危険
ワチェ慈善病院周辺の状況はというと、一見すると以前と変わらないのんびりとした穏やかな光景が広がっているように見えます。
でも実際には18時を過ぎると車やバイクの行き来や人影もすっかりとなくなり、時に響き渡る銃声や爆発音に住民たちは息を潜め怯えながら、いつでも避難できる準備を整えて生活しています。
少し前まではちょっと離れた場所のことだと思っていた紛争が、身近に迫って来ているのです。
それでもワチェ慈善病院には、治療を求めて患者さんたちがやって来ます。
周辺の治安状況が良くないにも関わらず、以前とほぼ変わらないペースで患者さんが治療を求めてやって来ていることからも、ミャンマー国内の医療体制がかなり厳しい状況にあることが分かります。学校に通うまでには病気を治したい!
小さな体にも関わらずお腹だけがパンパンに膨れ上がったピョーくん(4歳)もその1人。
ヒルシュスプルング病という腸を動かす神経細胞が生まれつき欠損している病気を持つピョーくんは、ガスや便を上手く出すことが出来ず、お腹がパンパンに膨れ上がっていました。
周りからの視線を気にするようになっていたピョーくんを見て、お母さんは「小学校に上がるまでに、何とかこのお腹を治してやりたい」と思っていたそうです。
ピョーくんが小さい頃にお父さんが亡くなり、農業の手伝いをしながら女手1つでピョーくんを育ててきたお母さんは、道中の治安が悪いにも関わらず母子2人でワチェまでやって来ました。
今までも色々な病院に行ってみたそうですが、なかなか治療が進まず、村の人からワチェ病院の噂を聞いてやって来たそうです。
まずは一時的にガスや便で膨らんだお腹を凹ますために人工肛門を造る手術をし、ピョー君のお腹はぺったんこに。
その後、人工肛門を閉じる手術も無事に終わり、何も気にすることなく元気に学校に通える状況が整いました。
無事に手術が終わってすやすやと眠るピョー君を、ホッとした表情で見守るお母さんの姿が印象的でした。手術が終わってスヤスヤと眠るピョーくん
手術を執刀した吉岡との記念撮影
手術してキレイになりたい!
「手術をして赤い口紅を塗りたいの」と話すのは、口唇裂という病気を持って生まれてきたリンちゃん(2歳)。
口唇裂とは、生まれつき上唇に裂け目がある病気で、500~600人に1人の割合で口唇裂を持った赤ちゃんは生まれてきます。
日本では生まれてすぐに必要な医療サポートが受けられるため、生後3ヶ月くらいで手術が受けます。
しかしミャンマーでは、この口唇裂の手術ができる病院や医療者が限られており、また医療保険制度もないため、治療を受けるチャンスがないまま成人している人も多くいます。
2歳のリンちゃんはザガインの僻地の出身で、特にリンちゃんが生まれた頃にはクーデター後の混乱で医療体制は崩壊しており、周りには手術を受けられるような病院はありませんでした。
「小さいうちは可哀想だから、もう少し大きくなってから手術を受けさせよう」思っていたご両親ですが、リンちゃん自身が「みんなと同じように、私も口紅を塗りたい」と言うようになり、手術を受けようと決意してワチェまでやって来ました。
口唇裂の手術のあとは、唇の傷が治るまでは口から飲んだり食べたりすることが出来ません。
その代わりに鼻からチューブを入れて、そのチューブから水やスープなどを入れて栄養を補給します。
何日も口から水分や食べ物が摂れないというのは大人でも辛いのですが、リンちゃんはぐずる事もなく治療の乗り越えました。手術が終わってまもないリンちゃんとお父さん
お母さんに水を注入してもらうリンちゃん
子どもたちやご家族の笑顔の絶えない病棟
入院した直後や手術の前後は子どもたちやご家族も不安そうな表情が見られたり、時には涙を流される事もあります。
でも手術後の傷の状態も落ち着いて、看護師や病院スタッフと親しくなってからは、「本当にここは内戦が起こって医療が崩壊している国の病院か?」と思ってしまうくらい、病棟内には子ども達やご家族の笑顔が溢れています。
やっと治療が受けられたという嬉しさと、外と違ってここは安全な場所という安心感が、そのようにさせているのだと思います。
それに加えて、治療費用のことを心配する必要がないというのも大きいはずです。
このように1人でも多くの患者さんやご家族の笑顔に出会うため、そしてこの笑顔を守るため、どんな困難があっても医療を提供し続けます。養護施設 Dream Train の子ども達の健康も守る
養育施設Dream Trainでは、常に120名近い子どもたちが共同生活を行っています。
そのため病気の早期発見や、感染症の集団発生の予防などには色々と気を遣っていますが、それでも体調を崩す子どもは発生します。
また中には大きな手術や長期に渡るリハビリが必要になる子もいます。ずっと抱えてきた病気
ミーニョさん(14)は、何度か背中の左側の鈍い痛みを時々自覚していました。
ドリームトレインに来る前から、腎臓の病気ということで何度か入院した事があったようですが、はっきりとした病名は分からず、特に積極的な治療を受ける事なく過ごしていたようです。
背中の痛みが続き、ずっと言われてきた腎臓の病気が悪化しているのかも知れないと心配になったミーニョさんは、施設の先生にそのことを相談しました。
すぐに病院を受診しエコー検査を受けたところ、左の腎臓に石があり腎臓も腫れている事が分かりました。
このまま長い間様子を見ていると腎臓の機能が悪くなるため、ワチェ慈善病院で腎臓の石を取り除く手術をして受けました。
今は症状もなく明るく元気に過ごしています。
ミーニョさんはお姉さんと一緒にドリームトレインにやって来ました。
お姉さんはすでに卒業して、ミャンマーにある日系企業に勤務しています。
ミーニョさん自身も日本に興味を持っており、まずは「あいうえお」の勉強からスタートしています。ワチェ病院で手術ごまもない頃のミーニョさん
元気になって笑顔のミーニョさん
時間がかかっても良くなりたい
トーニュン君は、とても活発で優しい男の子。
勉強もそれ以外の施設内の活動にも、何でも積極的に参加し、そして様々な分野で表彰も受けるほど優秀です。
そして優しくて面倒見も良いため、施設の先生達からの信頼も厚く、そして小さな子ども達にとっては憧れの存在です。
そんなトーニュン君ですが、7-8年ほど前から顔面麻痺の症状によって、上手く表情を作れないという悩みを抱えています。
これは麻痺が起こってすぐに治療を受ければ治る可能性が高いのですが、時間が経ってしまうとリハビリで少しずつ回復していくしかありません。
そのため、少し時間はかかりますが、今は病院で専門のリハビリを受けています。
トーニュン君も年頃なので、やはり自分がどんな風に見られているかとても気になるようで、日常生活の中でも鏡を見ながら一生懸命にリハビリに励んでいます。
その成果もあって、今は自然な笑顔が作れるようになって来ています。
時間はかかるかも知れませんが、少しでもよくなるために今後もリハビリに励みます。優秀者に贈られるトローフィーを持つトーニュン君
笑顔を見せてくれるトーニュン君
「ミャンマー子ども医療支援プロジェクト」として、子どもたちの健康を守るためのサポート頂くようになってから16年が経過しました。
この16年の間に、ミャンマー国内の状況は大きく変わりました。
そこに今回の大地震も加わり、医療面だけではなく、子ども達を取り巻く環境はさらに厳しくなると思われます。
そのような中でも、私たちの元にやって来てくれた子ども達1人1人が病気を克服し、そして厳しい環境の中でも強く明るく生きていけるよう、引き続きサポートしていきたいと思っております。
私たちはこれからもひとりひとりの子どもとその家族に寄り添い活動を続けてまいりますので、引き続き温かいご支援をよろしくお願い致します。《2024年度 会計報告》
項目 金額 ワッチェ慈善病院 手術費 121,543円 入院ベッド費 35,143円 薬剤購入費 2,484,656円 検査費 240,300円 交通費 154,157円 食費 350,893円 養育施設 ドリームトレイン 医療費 908,550円 合計 4,295,242円 ジャパンハート 河野朋子
J.S.Foundation事務局